ちゃんとしようと思うほど、苦しくなる。
頑張っているのに、なぜか心が休まらない。
妊活を始めてから、以前より自分に厳しくなってしまった。
そんなふうに感じる日がある方は、少なくありません。
妊活中は、
食事に気をつけて、
冷やさないようにして、
タイミングも意識して、
病院にも通って、
情報も集めて、
できることをひとつずつ積み重ねていく方が多いと思います。
それ自体は、決して悪いことではありません。
でも、まじめで頑張り屋さんほど、いつの間にか
「もっと頑張らないと」
「まだ足りないかもしれない」
と、自分を追い込みやすくなることがあります。
まず最初にお伝えしたいことがあります。
妊活中に本当に必要なのは、“頑張る量を増やすこと”ではなく、“続けられる心と身体に整えること”です。
妊活は、短距離走ではありません。
だからこそ、走り続けるための整え方がとても大切です。
妊活は、思っている以上に心に負担がかかりやすいものです
妊活のつらさは、検査や治療のことだけではありません。
結果を待つ時間、月経が来た時の落ち込み、周りの妊娠報告、年齢への焦り、夫婦間の温度差。
そうしたものが少しずつ積み重なって、心に負担をかけていきます。
ESHREの心理社会的ケアに関するガイドラインでは、不妊治療中の患者さんの多くが感情的な苦痛を経験すること、そして治療の負担感を理由に途中でやめてしまう人もいることが示されています。実際に海外のデータでも、負担の大きさを理由に約23%が早期中断すると指摘されています。
つまり、妊活でしんどくなるのは、気持ちが弱いからではありません。
それだけ負担の大きいことに、真剣に向き合っているからです。
「ちゃんとしなければ」が強くなるほど、心と身体は張りつめやすくなります
頑張り屋さんほど、妊活を“管理しなければならないもの”にしやすい傾向があります。
・排卵日を外してはいけない
・食事を乱してはいけない
・冷やしてはいけない
・ネガティブになってはいけない
・前向きでいなければならない
こうした「〜しなければ」が増えると、身体は休んでいるつもりでも、ずっと緊張したままになりやすくなります。
特に夜は、その緊張が表に出やすい時間です。
昼間は平気でも、夜になると急に不安が強くなる。
眠いのに頭が休まらない。
スマホで検索をやめられない。
そうした状態が続くと、心も身体もさらに張りつめてしまいます。
CDCは、よい睡眠習慣として、毎日なるべく同じ時間に寝起きすること、就寝30分以上前には電子機器を切ること、寝る前の大きな食事やアルコールを避けること、午後から夕方以降のカフェインを控えることを勧めています。
妊活中に睡眠を完璧にしなければならないわけではありませんが、眠る前の過ごし方を整えることは、心と身体の張りつめをやわらげる土台になります。
妊活は「完璧な管理」より、「続けられること」が大切です
頑張りすぎる方ほど、タイミングも完璧に合わせなければと思いがちです。
でも、ASRMでは、妊娠しやすい時期は排卵日を含む約6日間で、その時期に1〜2日おきの性交がもっとも妊娠しやすいと案内しています。
つまり、排卵日を1日だけ狙い撃ちしなければいけないわけではありません。
毎月完璧に管理することよりも、無理なく続けられることの方が大切です。
ここは、まじめな方ほど少し肩の力を抜いてほしいところです。
妊活は、頑張りの総量で決まるものではありません。
できることを丁寧に続けることは大切ですが、心まで追い込んでしまっては苦しくなってしまいます。
東洋医学では、「頑張りすぎ」は巡りの滞りとしてあらわれることがあります
東洋医学では、気持ちを張りつめ続けたり、我慢を重ねたりすると、
気の巡りが滞る
と考えます。
とくに春から初夏にかけては、「肝」のバランスが乱れやすい時期です。
肝は、気の巡り、感情、目、筋肉とも関わるとされるため、この時期に頑張りすぎが続くと、
・ため息が増える
・イライラしやすい
・胸や脇が張る
・首肩がこる
・目が疲れやすい
・眠りが浅い
・生理前に不調が強くなる
といった形で出やすくなります。
このような状態を、東洋医学では
肝鬱気滞(かんうつきたい)
とみることがあります。
少し難しい言葉ですが、簡単にいうと、
気持ちを飲み込みすぎて、心も身体もめぐりにくくなっている状態
です。
さらに、この巡りの悪さが長く続くと、胃腸を支える「脾」も疲れやすくなります。
すると、
・食欲が安定しない
・甘いものが増える
・だるさが抜けない
・お腹が張りやすい
・考えごとが止まらないのに身体は重い
というように、**肝脾不和(かんぴふわ)**の傾向が重なることもあります。
「頑張りすぎているサイン」は、こんな形で出ることがあります
今のご自身に、次のような状態はありませんか。
・夜になると急に不安が強くなる
・眠っても疲れが抜けない
・首肩にずっと力が入っている
・手足は冷えるのに頭は休まらない
・検索がやめられない
・食事を整えようとするほど苦しくなる
・排卵日や生理予定日に心が大きく揺れる
・少し予定がずれただけで自分を責めてしまう
・「休むこと」に罪悪感がある
このような状態がある時は、
努力が足りないのではなく、
心と身体が少し頑張りすぎているサインかもしれません。
鍼灸は「頑張り続けるための追い打ち」ではなく、「整えるための支え」です
妊活中に鍼灸を考える方も多いと思います。
ここは、誠実にお伝えしたいところです。
鍼灸は、卵管の状態を調べたり、精液検査の代わりをしたり、病院での治療の代わりになるものではありません。
妊活の基本となる検査や治療は、あくまで医療機関で確認することが大切です。
その一方で、HFEAは、鍼灸についてストレスをやわらげたり、ウェルビーイングを高めたりする目的で取り入れられることがあると説明しています。
ただし、妊娠率を高める効果については根拠がはっきりしていないとも案内しています。
当院でも、鍼灸を「結果を約束する方法」としてではなく、
冷え、緊張、眠りの浅さ、気持ちの張りつめなど、妊活中に重なりやすい心身の負担を整える補助的な支えとして大切にしています。
今日からできる3つのこと
1.やることを増やす前に、減らせる負担を見てみる
頑張りすぎている時ほど、
サプリを増やそう
運動も足そう
もっと検索しよう
もっと温活しよう
と、「足すこと」で何とかしようとしがちです。
でも、まず必要なのは、
何を増やすかではなく、何を減らすか
かもしれません。
たとえば、
夜の検索を10分短くする。
予定をひとつ減らす。
完璧な食事を目指しすぎない。
それだけでも、心の負担は少し変わります。
2.夜は「整える時間」と決める
夜は、不安が大きく見えやすい時間です。
だからこそ、眠る前は
答えを探す時間ではなく、
身体を休ませる時間にしてみてください。
・スマホを見る時間を短くする
・ぬるめのお風呂に入る
・白湯を飲む
・照明を少し落とす
・「今日できなかったこと」ではなく「今日終えたこと」に目を向ける
このくらいで十分です。
整えることは、特別なことを増やすことではありません。
3.冷えや食事を「自分を責める材料」にしない
妊活中は、冷えや食事にも敏感になります。
けれど、1回冷えたからだめ、1回食事が乱れたからだめ、ということではありません。
大切なのは、毎日を極端にしないことです。
お腹、足首、首元を冷やしすぎない。
冷たいものばかりに偏りすぎない。
温かい汁物や消化にやさしいものを取り入れる。
頑張りすぎる方ほど、100点を目指して苦しくなります。
でも、妊活に必要なのは、100点の生活ではなく、続けられる整え方です。
自分でやさしく触れやすいツボ
気持ちが張りつめやすい時に、やさしく使いやすいツボがあります。
太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
ため息が増える時、イライラしやすい時、気の巡りを整えたい時に使いやすいツボです。
神門(しんもん)
手首の小指側、手のひら側のしわのあたり。
気持ちがそわそわする時、眠りに入りにくい時、緊張が抜けにくい時に使いやすいツボです。
どちらも、痛いほど押す必要はありません。
息を吐きながら、少し気持ちいい程度でやさしく触れてみてください。
当院の考え方
当院では、妊活中の「頑張りすぎ」を軽く見ません。
でも、ただ
「頑張りすぎないでください」
とだけ言うこともしません。
頑張らなければ不安になる。
何かしていないと落ち着かない。
そんな気持ちの背景には、妊活ならではの苦しさがあります。
だからこそ当院では、
病院での検査や治療を大切にしながら、
そのうえで、
冷え
自律神経の乱れ
睡眠の質の低下
首肩の緊張
気持ちの張りつめ
といった、毎日を苦しくする要素を東洋医学の視点から整えていくことを大切にしています。
何でも鍼灸で解決する、とは言いません。
その代わり、ひとりで抱え込みやすい心と身体のしんどさを、きちんと一緒に整理していきます。
頑張りすぎてしまうあなたが、悪いわけではありません
妊活中、頑張りすぎてしまうのは、
弱いからではありません。
ちゃんと向き合っているからです。
大切に思っているからです。
だからこそ、苦しくなるのです。
でも、本当に大切なのは、
自分を追い込み続けることではありません。
妊活を続けていけるように、
いまの自分を守ることです。
頑張ることをやめる、ではなく。
頑張り方を整え直す。
その視点を持てるだけで、心は少し呼吸しやすくなることがあります。
もし今、
「もう少し力を抜きたいのに、抜き方が分からない」
と感じているなら、
それは甘えではありません。
整え直すタイミングかもしれません。
ひとりで抱えず、まずは今の心と身体の状態を一緒に整理するところから始めていきましょう。

