妊活を始めると、
「私はちゃんと排卵できているのかな」
「生理周期って、これで普通なのかな」
と、不安になる方は少なくありません。
排卵日を知りたい。
タイミングを逃したくない。
少しでも妊娠に近づきたい。
そう思うほど、数字や日付に気持ちが引っ張られて、苦しくなってしまうこともあります。
でも、まず最初にお伝えしたいことがあります。
妊活の第一歩は、排卵日だけを追いかけることではなく、自分の生理周期を正しく知ることです。
生理周期は、ただの予定表ではありません。
心と身体の状態、排卵の目安、そして受診のタイミングを教えてくれる、大切なサインです。
生理周期は「次の生理までの日数」のことです
生理周期とは、生理が始まった日を1日目として、次の生理が始まる前日までを数えたものです。
平均は28日といわれますが、実際には個人差があり、多くの方では21〜35日程度が一般的な範囲です。生理そのものの日数も、通常は7日以内がひとつの目安になります。
ここで大切なのは、
「28日ぴったりでないといけない」
わけではないということです。
30日周期の方もいれば、26日周期の方もいます。
毎月きっちり同じでなくても、ある程度の範囲で安定していれば、すぐに異常とは限りません。
逆に、周期が毎回大きく乱れる、極端に短い、極端に長い、何か月も来ない、という場合は、排卵やホルモンバランスに関係することもあります。NICHDでは、14〜25%の女性に月経不順がみられ、不規則な周期は排卵している場合もあれば、排卵していない場合もあると説明しています。
排卵日は「生理から14日目」とは限りません
妊活中にとても多い思い込みのひとつが、
「排卵日は生理開始から14日目」
という考え方です。
たしかに28日周期の方では、その頃が目安になることがあります。
ただ、実際の排卵のタイミングはもっと幅があります。NICHDでは、平均的な28日周期では排卵はおおよそ12〜14日目ごろですが、実際には生理開始から10〜21日目のどこかで起こり得るとしています。さらにASRMでは、妊娠しやすい「fertile window(妊娠しやすい期間)」は、排卵日を含む6日間で、排卵日当日とその前5日間が重要だと示しています。精子は女性の体内で最長5日程度生きるため、「排卵日当日だけ」が勝負というわけではありません。
だからこそ、
「今日が14日目だから絶対この日」
と一点に絞りすぎるより、
自分の周期の傾向を知って、妊娠しやすい時期を少し広めに考えることが大切です。
生理周期を知ると、妊活が少し整理しやすくなります
生理周期を記録していくと、妊活では次のようなことが見えやすくなります。
・生理がだいたい何日ごとに来ているか
・排卵の時期がどのあたりになりやすいか
・生理前に不調が強くなりやすいか
・周期が短くなっているのか、長くなっているのか
・受診を急いだほうがよいサインがあるか
つまり、生理周期を知ることは、
ただ排卵日を当てるためではなく、
自分の身体のクセや変化に早く気づくためでもあります。
妊活中は、少しの変化でも不安になりやすいものです。
でも、何も分からないまま不安になるのと、
「今月は少し遅れているだけかもしれない」
「もともと私は30日前後なんだ」
と分かったうえで見守るのとでは、気持ちの負担がかなり違います。
タイミングは「完璧に当てる」より「逃しすぎない」ことが大切です
タイミング法や自己流の妊活では、
「排卵日を1日も外したくない」
と思い詰めてしまう方が少なくありません。
けれど、ASRMは、妊娠しやすい時期に1〜2日おきの性交が最も妊娠率を高めやすい一方で、週に2〜3回程度でも結果はかなり近いと案内しています。さらに、頻度を細かく管理しすぎることが、かえって大きなストレスになる場合もあるとしています。
つまり、
毎月完璧に排卵日を言い当てなければいけないわけではありません。
むしろ大切なのは、
排卵のありそうな時期に、無理のない範囲で継続できることです。
タイミングがプレッシャーになりすぎると、
妊活そのものが苦しくなってしまうことがあります。
正確さも大切ですが、続けられることはもっと大切です。
基礎体温や排卵検査薬は、あくまで“手がかり”です
生理周期を知るために、基礎体温をつけたり、排卵検査薬を使ったりする方も多いと思います。
これらは役立つことがありますが、万能ではありません。
ASRMでは、妊娠しやすい時期を知る方法として、カレンダー法、頸管粘液の観察、尿中LHをみる排卵検査薬、基礎体温などを挙げています。一方で、規則的な周期の人でも排卵のタイミングはかなり変動し得るとしています。尿中LH検査は有用ですが、排卵は陽性後2日以内のどこかで起こり得るため、1回の検査結果だけに頼りすぎないことも大切です。
アプリの予測も、
基礎体温のグラフも、
排卵検査薬も、
すべては「ヒント」です。
答えをひとつに決めつける道具ではなく、
自分の身体の傾向を知るための補助として使うほうが、心がラクになります。
こんな生理周期なら、早めに相談して大丈夫です
生理周期には個人差がありますが、
次のような場合は、婦人科や生殖医療の医療機関に相談してよいサインです。
・生理周期が21日未満または35日超で続いている
・生理が3か月以上来ないのに妊娠していない
・経血量が極端に多い、または少なすぎる
・生理痛が強く、日常生活に支障がある
・不正出血がある
・周期のばらつきが大きい
・妊活を始めたのに、何を目安にすればよいか全く分からない
また、不妊の評価を始める目安としては、NICEでは12か月の定期的な避妊なし性交でも妊娠に至らない場合を基本のひとつとし、ASRMとACOGは、35歳以上では6か月、40歳以上ではさらに早めの相談を勧めています。さらに、月経不順や排卵障害が疑われる場合、子宮内膜症や既往歴がある場合は、待たずに相談することが勧められています。
「こんなことで受診していいのかな」と思う方ほど、
早めに整理してもらうことで安心につながることがあります。
東洋医学では、生理周期は“気血のリズム”としてみていきます
東洋医学では、生理周期は単なる日数ではなく、
気・血・水の巡りと、肝・脾・腎の働きのあらわれとしてみていきます。
とくに春から初夏へ向かうこの時期は、
「肝」の働きが乱れやすく、
気持ちの張りつめ、イライラ、ため息、胸や脇の張り、首肩こり、眠りの浅さが出やすい時期です。
妊活中でこんな状態はありませんか。
・生理前になるとイライラしやすい
・胸が張る
・お腹は張るのに、手足は冷える
・考えごとが止まらない
・生理周期がストレスで乱れやすい
・生理前に甘いものがやめられない
こうした方は、東洋医学では
肝鬱気滞(かんうつきたい)
や
肝脾不和(かんぴふわ)
の傾向としてみることがあります。
簡単にいうと、
気持ちを抱え込みすぎて巡りが滞り、
その影響で胃腸まで疲れやすくなっている状態です。
また、生理の色が暗い、塊が出やすい、刺すような痛みがある方では、
気滞瘀血(きたいうけつ)
の傾向を考えることもあります。
もちろん、これだけで全てを決めつけることはできません。
でも、周期だけでなく、
痛み、冷え、気分、睡眠、食欲まで見ていくと、
身体の声が少し分かりやすくなることがあります。
今日からできる3つのこと
1.まずは3か月、自分の周期を記録してみる
完璧な表を作らなくても大丈夫です。
まずは、
・生理が始まった日
・終わった日
・経血量の変化
・生理痛の強さ
・おりものの変化
・気分や睡眠の状態
このくらいを、ざっくりでよいので残してみてください。
見返した時に、思っていた以上に傾向が見えてくることがあります。
2.“排卵日1点狙い”をやめる
妊活は、狙いを定めることも大切ですが、
追い込みすぎると続かなくなってしまいます。
排卵検査薬やアプリは使っても大丈夫です。
ただ、それを「答え」ではなく「目安」として使い、
排卵のありそうな時期に少し余裕を持たせて考えることが大切です。
3.身体を冷やしすぎず、睡眠を削りすぎない
ASRMは、妊娠を目指す方に対して、喫煙や薬物使用を避け、アルコールやカフェインは最小限から中等度にとどめること、さらに葉酸400μg/日の補充を勧めています。
そのうえで、東洋医学の視点でも、
妊活中は
・お腹
・足首
・首元
を冷やしすぎないこと、
夜更かしを続けすぎないこと、
朝食を抜きすぎないことが、基本の整え方になります。
食養生としては、
お味噌汁、スープ、温野菜、卵、魚、大豆製品、雑炊など、
温かくて消化にやさしいものから整えていくのがおすすめです。
完璧な食事ではなく、
身体をこれ以上疲れさせないことを大切にしてください。
自分でやさしく押しやすいツボ
妊活中の周期のゆらぎや、気持ちの張りつめが気になる時に、
使いやすいツボがあります。
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところから、指幅4本分(人差し指から小指まで)ほど上。
冷えや婦人科系のお悩み、巡りを整えたい時によく使われます。
太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
イライラ、ため息、気の巡りの滞りが気になる時に使いやすいツボです。
どちらも、
強く押し込むのではなく、
息を吐きながらやさしく刺激する程度で十分です。
妊娠の可能性がある時や体調に不安がある時は、無理をせずご相談ください。
当院の考え方
妊活では、
生理周期を知ることはとても大切です。
でも、それだけで全てが分かるわけではありません。
周期が整って見えていても、排卵の確認が必要なことがあります。
逆に、少し乱れていても、必要以上に悲観しなくてよいこともあります。
大切なのは、
数字だけで自分を責めないこと。
そして、必要な時には、病院で確認することです。
当院では、不妊鍼灸を通して、
冷え、血流、自律神経の乱れ、睡眠の質、月経前後の不調、妊活中の不安や緊張など、
心と身体の両面から整えるお手伝いをしています。
ただし、月経不順が強い場合や、無月経、不正出血、強い痛みがある場合は、
まず婦人科や生殖医療の医療機関で確認していただくことが大切です。
鍼灸は、病院での検査や治療の代わりではなく、
必要な医療と並行しながら、心身を整えるための支えとして考えています。
生理周期を知ることは、自分を責めるためではありません
生理周期を記録し始めると、
「ちゃんとできていない」
「今月もずれた」
と、自分を責めてしまう方がいらっしゃいます。
でも、本当に大切なのは、
きれいなグラフを作ることではありません。
28日ぴったりに整えることでもありません。
今の自分の身体を知って、必要な時に助けを求められること。
それが、妊活のとても大事な第一歩です。
不安な気持ちを抱えたまま、
ひとりで検索を続けてしまう日もあると思います。
そんな時こそ、
「私は今、自分の身体を知ろうとしている途中なんだ」
と、やさしく思ってあげてください。
妊活は、急がせる言葉より、
落ち着いて整えていく時間が必要なこともあります。
ひとりで抱えず、まずは今の周期と体調を一緒に整理するところから始めていきましょう。

