不妊治療を始めると、
「鍼灸も一緒に受けていいのかな」
「病院の治療の邪魔にならないかな」
と不安になる方は少なくありません。
薬を使う治療や、採卵、移植などがある中で、何を優先して、何を控えた方がよいのか分からなくなるのはとても自然なことです。
妊活中は、ただでさえ気持ちが張りつめやすく、少しのことでも心配になりやすい時期です。
まず結論からお伝えすると、不妊治療と鍼灸は、基本的には併用して大丈夫です。
ただし、鍼灸は病院での検査や治療の代わりになるものではなく、あくまで補助的に心と身体を整えるためのものとして考えることが大切です。
不妊治療の主役は、あくまで病院での検査と治療です
妊活や不妊治療では、まず何より大切なのは、必要な検査と治療を適切に受けることです。
WHOは不妊を、12か月以上の避妊をしない性交があっても妊娠に至らない状態と定義しており、世界では生殖年齢の人の約6人に1人が不妊を経験するとしています。NICEも2026年に不妊の評価と治療のガイドラインを更新し、検査や治療を根拠に基づいて進めることの重要性を示しています。
つまり、妊活中に大切なのは、
「鍼灸に通っているから大丈夫」
と考えることではなく、
・排卵の確認
・卵管の状態
・子宮の状態
・精液検査
・必要な薬や処置
といった、病院でしか確認できないことをきちんと押さえることです。
鍼灸は“治療の代わり”ではなく、“整える支え”です
では、鍼灸には意味がないのかというと、そうではありません。
HFEAは、鍼灸について、ストレス軽減やウェルビーイングのために提案されることがある一方、子宮への血流改善などを通じて妊娠率を高めるという効果については証拠がはっきりしない、と案内しています。また、多くの方にとって、通常のIVFは補完療法なしでも有効だとしています。
このことから分かるのは、
鍼灸は「妊娠率を保証するもの」として受けるのではなく、妊活中に重なりやすい不調や緊張を整えるために役立てるもの
として考えるのが自然だということです。
たとえば妊活中は、
・お腹や足先の冷え
・首肩のこわばり
・眠りの浅さ
・気持ちの張りつめ
・通院や結果待ちによる不安
・生理前後の不調
などが重なりやすくなります。
こうしたつらさをそのままにせず、心と身体を少しでも整えていくことは、妊活を続けていくうえでとても大切です。
「鍼灸をすると妊娠しやすくなる」と言い切っていいわけではありません
妊活中は、少しでも可能性があることを取り入れたくなるものです。
だからこそ、鍼灸についても
「移植の前後に受けると妊娠率が上がる」
「通えば結果が変わる」
といった言葉を見ると、気持ちが揺れてしまうことがあります。
けれど、ここはとても慎重に受け止める必要があります。
ASRMは、胚移植の前後に行う鍼灸について、IVFにおける生児獲得率を改善する一貫した根拠はないとしています。HFEAも、証拠が十分でない治療アドオンに多額のお金をかける前に、本当に必要かをよく考えるよう促しています。
ですから、
不妊治療と鍼灸は併用してよいけれど、鍼灸を“結果を約束してくれるもの”として受け止めすぎないこと
が大切です。
やさしさだけでもだめですし、期待をあおりすぎるのも違います。
妊活中だからこそ、ここは冷静に、誠実にお伝えしたいところです。
併用するときに大切な3つのこと
1.主治医の方針を最優先にする
排卵誘発、人工授精、採卵、移植など、病院での治療にはそれぞれ大切なタイミングがあります。
まず優先したいのは、主治医から指示されたスケジュールや薬の使い方です。
鍼灸を受ける場合も、
「今どんな治療中なのか」
「薬を使っているか」
「採卵前後か、移植前後か」
を施術者にきちんと伝えることが大切です。
2.強い症状がある時は、先に病院へ連絡する
妊活中、とくに排卵誘発や採卵の前後には、体調の変化が出ることがあります。
HFEAは、排卵を増やすための薬でOHSSが起こることがあり、軽症は比較的多い一方、重症はまれでも注意が必要だとしています。お腹の張りや痛み、症状の悪化がある場合は、まず治療中のクリニックへ相談することが大切です。
そのため、
・強い腹痛
・お腹の強い張り
・息苦しさ
・出血や発熱
・採卵後の強い不調
がある時は、まず病院へ。
鍼灸を受けるかどうかは、その後に判断するのが安心です。
3.“何のために受けるのか”をはっきりさせる
鍼灸を受ける目的があいまいだと、
「受けたのに結果が出なかった」
と、余計につらくなってしまうことがあります。
ですから、最初に、
・冷えを整えたい
・眠りの質を整えたい
・緊張をゆるめたい
・妊活中の心身の負担を軽くしたい
・病院治療と並行して、身体の土台を見直したい
など、目的をはっきりさせておくことが大切です。
東洋医学では、妊活中の“張りつめ”にも目を向けます
東洋医学では、妊活中の不調を、子宮や卵巣だけの問題として見ません。
冷え、血の巡り、胃腸の弱り、睡眠の質、気持ちの張りつめ。
こうした全体のバランスをみていきます。
5月のはじめは、春の緊張をまだ引きずりやすい時期です。
東洋医学では春は「肝」と関わりが深く、気の巡りが乱れると、
・イライラしやすい
・気持ちが沈みやすい
・ため息が増える
・首肩がこる
・眠りが浅い
・PMSが強くなる
といった変化が出やすくなると考えます。
このような状態を、
肝鬱気滞(かんうつきたい)
と表現することがあります。
少し難しい言葉ですが、簡単にいうと、
不安や緊張を抱え続けて、心も身体も巡りが悪くなっている状態
です。
不妊治療と鍼灸を併用する意味は、こうした“検査だけでは見えにくいしんどさ”にも目を向けられるところにあります。
今日からできるセルフケア
不妊治療と鍼灸をうまく併用したい時は、日常でも次のことを意識してみてください。
1.治療日まわりは予定を詰め込みすぎない
採卵前後、移植前後、結果待ちの時期は、思っている以上に心も身体も疲れます。
できるだけ、予定を詰め込みすぎず、休む時間を少し確保しておきましょう。
2.お腹・足首・首を冷やしすぎない
妊活中は、冷えを気にされる方がとても多いです。
厚着をしすぎる必要はありませんが、
お腹、足首、首元を冷やしっぱなしにしないことは基本として大切です。
3.情報を増やしすぎない
つらい時ほど、たくさん検索したくなります。
けれど、情報が増えるほど不安が強くなる日もあります。
そんな日は、答えを探し続けるより、
「今日はここまで」と決めて、心を休ませることも必要です。
当院の考え方
当院では、不妊鍼灸を
病院の治療に代わるもの
とは考えていません。
病院での検査、薬、処置を大切にしながら、
そのうえで、
・冷え
・血流の低下を感じやすい状態
・自律神経の乱れ
・睡眠の質の低下
・首肩のこわばり
・妊活中の不安や緊張
などを、東洋医学の視点から丁寧に整えていくお手伝いをしています。
奈良・上牧町、北葛城郡で、不妊治療と並行しながら身体を整えたいと考えている方にとって、
「病院だけでもない、気休めだけでもない」
そんな支えのひとつでありたいと思っています。
併用していいか迷った時は、“何を優先するか”で考えてください
不妊治療と鍼灸は、基本的には併用して大丈夫です。
ただし大切なのは、順番を間違えないことです。
まずは病院で必要な検査や治療を受けること。
そのうえで、妊活中の心と身体を整える支えとして鍼灸を役立てること。
この順番で考えると、迷いは少し整理しやすくなります。
妊活中は、少しでもできることを増やしたくなる反面、
増やしすぎて疲れてしまうこともあります。
だからこそ、
「何を足すか」だけでなく、
「何のために取り入れるのか」
を大切にしてみてください。
当院では、不妊治療と並行して身体を整えたい方のお話を丁寧に伺いながら、その方に合わせた形でサポートしています。
ひとりで抱え込まず、まずは安心してご相談ください。

